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最高裁判所第三小法廷 昭和29年(あ)160号 決定

本籍並びに住居

神戸市生田区元町通六丁目八七番地

会社重役

大橋こと

原田多三郎

明治三一年二月二七日生

右の者に対する入札談合被告事件について昭和二八年一一月二六日大阪高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する

理由

弁護人堀正一の上告趣意は、単なる法令違反の主張であつて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(原審の確定した事実は、被告人は土木建築請負業株式会社大橋組の取締役社長であるところ、同会社は神戸市施行の生田区役所庁舎及び同市立葺合第二中学校々舎の新築工事の競争入札人に指名されたが、同様右工事の競争入札人に指名された松本市松から懇請により金員を貰受ける約旨の下に右会社の入札価格を市松が落札人になり得るよう任意に定めることを承諾し、会社代表者の記名捺印ある入札金額記入欄を空白のままとした入札書を予め市松に交付し置き、同人において右入札書に適宜入札金額を記入して入札せしめ、その代償として金八万円及び金五千円の交付を受けたというのであるから、原審がこの事実をもつて被告人は不正の利益を得る目的を以て談合したものとし、刑法第九六条の三第二項を適用処断すべきものとしたのは正当である。)

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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